静かに動き出す、始まりの鼓動は・・・













06 友達














待ちわびた、一日最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

開放感に包まれた教室はたちまちにぎやかな空間と化した。







「あれ、今日は早いんだね、アスラン?」


「あぁ、ちょっと用事が出来てね。 泣き虫の親友が会いに来たって言うもんだから・・・」


「へぇ〜。会ってみたいなぁ。」


「今度、紹介するよ。 それじゃあ。」


「ぅん、バイバイ。」





そう言うと、アスランは教室を足早に出て行った。

一人になったは静かに教室を見渡した。

フレイはいつもの通りグループの中で、得にやる事も無いのでは帰ろうと荷物を持つ。





「ねぇ、・・・」





教室から廊下へと足を踏み出したその時。

聞こえるか聞こえないかの、今にも消えそうな声が彼女を引き止めた。

振り返ると、フレイが後ろに立っている。




「何?」


「話したいことがあるんだけど・・・、ちょっといい?」


「・・・いぃよ。」



そうが返事をするとフレイは、ここじゃまずいから・・・と、どこか頼りない足取りで歩き出した。













ガチャッと鈍い音をたてて、扉が閉まる。

冬が来た事を物語る、冷たい風が吹きつける。

とフレイが来たのは、屋上だった。








「で、話って何?」



ひんやりとしたフェンスに寄りかかったは、ただ俯いて立っているフレイに尋ねた。

一方的に自分を避け出したのはフレイ方なのに、今さら話があるなんて・・・。

あまり、いいことではないらしい。



「誰にも・・・言わないでくれる?」


「・・・わかった。」






フレイの顔が微かに赤くなった。

寒さのせいでもない、まぎれもない女の顔。



「あたし・・・、ザラ君の事、好きかも・・・」


「・・・・そう。それだけ?」


「えっ、だから、ザラ君と仲いいから・・・、協力してくれないかって・・・」


「・・・なんで?」


「・・えっ・・・」




少しづつ輝きを取り戻して行った顔に、絶望が入り混じった。

すがるように見つめてくる視線が、気持ち悪い。



「だって自分の事でしょ? それくらい自分でやりなよ。協力する必要なんかないじゃん。」

「・・・・」




何か言いたそうに一歩踏み出そうとしたフレイの足は、途中で止まる。

握ったこぶしが、震えていた。











「あたしたち・・・、友達でしょ?」


















それは、まるで懇願するような眼だった。

微かにの表情が動く。






冷たい、風が、やんだ。













「・・・何言ってるの?」



の口から出た言葉は、冬の空気よりも風よりも冷たくフレイに突き刺さる。

俯いていたがゆっくりと顔を上げた。



「あたしは、友達になった覚えはない。 友達なんて一人もいない。」


「どうして!? あたしはのこと、信じてたのに?」


「信じてた?笑わせないでよ。 あたしは、信じない。人間なんて信じない。」


「・・ねぇ、何言ってるの?」


「・・・・あたしは、フレイと友達になった覚えはない。だから、協力もしないから。」










そう、最後の一言をは言い切る。

たちまちフレイの瞳に涙が溢れた。

そしてそのままきびすを返して、屋上から走り去る。








「信じない・・・・。誰も、二度と・・・」






そうつぶやいて、溜息をついたのスカートを風が弄ぶ。

眼をつぶった先に浮かんできたのは、あの優しい笑顔だった。





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060320
ゴメンなさい、アスランが出ません。
泣き虫の親友は、彼です。freedomの彼です。