雨よ、全てを隠して・・・
04 花のように儚いのなら
「ぅわっ、雨だ・・・・」
鞄を持ち玄関を開けると、朝だというのに薄暗くシトシトと雨が降っている。
「学校、休もうかな・・・」
小さくそうつぶやくと、一歩外に踏み出したの足は再び家の中に戻ろうとするが頭の中に浮かんだのはアイツの顔・・・。
「・・・はぁ・・・」
そう溜息を漏らすと、満更でもない様子で傘を手に取り、は歩き出した。
「おはよう、。」
「あ、おはよう、アスラン。」
雨のためか、いつもより人の少ない教室にアスランは足を踏み入れた。
机に突っ伏しているいつものスタイルのが見える。
「アスラン、びしょびしょじゃん。」
「そう?いちおう傘は差したんだけど。」
そして、二人で思わず笑い合う。
「アスランの傘って、小学生が差す黄色いやつ?」
「残念、コンビニのビニール傘で。」
初耳〜とが言って再び二人で笑い出す。
いつもと変わらない朝の風景。
「、今日顔色悪くない?」
「・・えっ・・・」
なんの脈絡も無い会話の中で、アスランが急に真面目な顔でに問いかけた。
「だから、いつもより青いっていうかなんというか・・・・」
「あ、多分寝不足だよ。なかなか数学の宿題終わらなくてさ。」
「・・・それって、がいつも授業サボるから悪いんじゃん。」
「だって、つまんないし・・・」
ねぇ、?
俺が気づいてないと思う?
そうやって笑う笑顔も、みんな今日は虚像だよね?
本当の事教えてよ・・・
「じゃぁ、保健室行くので後はよろしくね、アスラン?」
朝のホームルームが終わったと思ったとたん、が席を立ち上がった。
「了解だけど、一時間目英語だよ?」
「眠気には勝てないんだな・・・」
それだけ、は言うとヒラヒラと手を振りながら教室を後にする。
「いつもなら、英語は出てたのに・・・・」
そう、小さくつぶやきながらアスランはの後ろ姿を見送るしかなかった。
教室から、程遠く離れた階段の踊り場では立ち止まった。
そして、はぁ・・と本日2回目の溜息をつく。
アスランには、バレてしまったのだろうか?
見破られてしまっただろうか、自分の嘘は。
それにしても、勘の鋭いやつだ。
そう思いながら、はふと窓の外を見た。
一段と強くなった雨は、窓ガラスを壊す勢いで叩きつけている。
ドキンと心臓の鼓動が鳴った。
誰もいない、静かな廊下。
叩きつける雨。
全てが、あの日と同じ・・・・
「・・・思い出すな・・・」
まるで、もう一人の自分を牽制するようにが呟いた。
ドキン、ドキンと鼓動は早くなる一方。
「・・・っ・・・」
は何かを振り切るように、走り出した。
自然と、その瞳には涙が溢れる。
あと少し・・・・
ガタッ、という物音で保健室の万人、マリューは書類から目を放した。
物音がしたほうを見ると、走ってきたのか息を切らして入り口のへたり込んでいるがいる。
「ちゃん・・・」
マリューは立ち上がると、半泣き状態のの頭をなでた。
「雨か・・。 大丈夫よ、ここには何にもないから。」
の振るえがわずかに止まる。
「過去の囚われ、か。」
全て忘れられたらいいのに・・・
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060314