風に全てを奪われて
03 手の届かないモノ
「、最近ザラ君と仲いいよね。」
「・・・・はぁ?」
「ゴメン、気にしないで。」
アスランが転校してきてから、一週間後の4時間目が終わった昼休み。
突然そう切り出してきたフレイをは怪訝な顔で見た。
しかし、フレイははっと口を閉ざし、一言だけ謝ると慌ててその場を立ち去ってしまう。
そんないつもと違うフレイの様子を一瞥すると、は昼食を取るために屋上へと向かった。
「。」
廊下特有のひんやりとした感覚と、響きを持ったここ数日で聞きなれた声には呼び止められた。
「何、アスラン?」
「お昼、一人なら一緒にどう?」
「好きにすれば・・・」
いつかもあったような階段での会話。
しかし、前と変わったのは一見ぶっきらぼうにも聞こえる言葉の中に、何かが込められていることだろうか。
それでも、は自分の態度に少し嬉しそうなアスランを完全に無視して屋上への扉を開けた。
少々、肌寒い風が吹く屋上には数えるほどしか人はいなく、その中をはわき目も振らずに定位置へと歩く。
「・・あのさ、」
食べ始めてから数分。
沈黙に絶えられなくなったのかアスランが口を開いた。
「なに?」
「せっかくだしさ、何か話そうよ。」
「別に、いぃけど・・・」
だからといって会話が生まれるわけでもない。
しゃべんないの?
と不思議そうに顔を上げたアイスブルーの瞳がアスランを捕らえた。
「じゃぁ・・・笑って、?」
「・・・正気ですか?」
まるで珍獣でも見たかのように見開かれたアイスブルーと、真面目な顔をした翡翠が交差する。
「何言ってるのかわかってるの、あんた・・・?」
「もちろん。だって笑わないと幸せ逃げるよ?」
だから、ね。
と屈曲のない笑顔でアスランは笑った。
「じゃぁさ、幸せってなんなんだろうね?」
「・・・初めてだよ、そんなこと真面目に考える人。」
「・・・・・」
「でも、それの正体がわからなくてもやっぱり嬉しいでしょ?幸せな時って。」
確かに・・・。
とが頷く。
「だから、笑ってよ?」
「やだ。」
即答だった。
二人の周りに、絶対零度の空気が風に乗って流れて行く。
「じゃぁ・・・・」
そう言いながら、アスランは空となった袋を持って立ち上がった。
「こうしようよ。」
「何?」
「約束。俺がの事幸せにしたら、が笑うってね。」
まるで、いたずらを成功させた子供のようにアスランは言った。
「やってみれば? 無理だと思うよ、きっと。」
同じく立ち上がった、が挑発的に挑む。
「わからないよ、未来なんて。」
永遠にあり続ける物なんて無くて・・・
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改060312