何も生まれず、何も見えずに。
02 翼をもがれた天使
この学校に転校して一週間はたった。
その間で分かったと言えば、隣の席の彼女・・・は嫌いな授業は受けない質らしい。
そしてその間、彼女は保健室に行っており、迎えに行く役目を負ってるのは前の席のフレイということ。
クラスの人たちは不満だらけらしいが、彼女の威圧感に圧倒されて何も言えない。
それは大半の教師にも言えた。
「ねぇ、のところ行くけど、ザラ君も一緒にどう?」
「・・・行こうかな。」
特に理由はないけど、やはり彼女は気になる存在。
その不思議な感情は、日に日に増す寒さのようにアスランの中でも強くなっていった。
*
「、起きて。」
ツーンと消毒液の匂いがする保健室。
その一番窓際のベットでは寝ていた。
寝顔は見えないがそうとう熟睡してるらしい。
「うん・・・おはよ、フレイ。」
「おはよう。ほら、早くして。次の授業出るんでしょ?」
「単位危ないからね・・・・ってなんでアンタがここにいるの!?」
まだ覚醒しきっていない目を擦りながら、視界の端に映るアスランの姿をは捕らえた。
冷たいアイスブルーの瞳が驚きで見開かれる。
しかし、寝起きの頭は上手く回ってはくれない。
「ほら、そんなこと言わない。」
「フレイが連れて来たんだ・・・」
「休み時間ごとに質問攻めにあってるの見たら、かわいそうって普通思うでしょ?」
「あぁ・・・・そう?」
またそう言う事言って!!
と、フレイになだめられているの姿を見て、アスランはフフッと笑う。
いつもとは雰囲気の違うに、笑いを堪える事は出来なかった。
「なんで笑ってるのよ・・・」
「ゴメンなさい、ただ面白くて。」
「・・・・・」
「怒りましたか・・・?」
必死で笑いを止めようとして涙目になりながらいうアスランを尻目に、はベットから出た。
後ろからフレイとアスランの視線が刺さって、どうも感じが悪い。
もう一眠りしようか。
「あぁ!!」
一瞬、静寂が訪れた保健室の中にフレイの声が響き渡った。
これには流石にも振り向いた。
「今度は何?」
「あたし、先生に呼ばれてるんだった!!ごめん、先行くね。」
「えっ、ちょっと!!」
「、ザラ君のこと頼んだ!!」
保護者のようにフレイはそう言残して、保健室を去っていった。
再び、沈黙が訪れる。
顔を上げると困ったようなよくわからない表情をしたアスランと目が合った。
一体どうすればいいのだろう・・。
「あの、そろそろ行きません?次、教室は移動みたいだし・・・」
「・・・・えっ!?」
「科学室・・・ですよね?」
「あっ、うん・・・」
なんだかこいつといると、調子が崩れっぱなしだ。
コレ・・・と、差し出された自分の分の教科書を受け取って思う。
そんな自分び溜め息を吐いて、とアスランは保健室を後にした。
*
人気の少ない廊下に、コツコツと上履きの音がリズムよく響く。
ガヤガヤと、教室から漏れてくる声だけが二人の聴覚に届いていた。
「ねぇ、なんでついてくるの?」
「教室が一緒ですから。それに、科学室の場所まだ知らないので。」
「あっ、そうか・・・」
「さんって、面白い人なんですね。」
えっ、と思わず振り向いたに相変わらずアスランを穏やかな笑みを浮かべる。
なんとも言えない表情でアスランを睨み付けていたは、はぁ、と溜めていた息を吐いた。
そしてたった一言を冷たく言い放った。
「じゃぁ、あたしの後を歩くならその臭い笑みやめてくれない?気持ち悪くなる。」
「・・・・・」
「それと、いつまで本性隠し続けるんですか?アスラン・ザラ。」
「・・・・・、君にはお手上げだな。」
開け放たれた廊下の窓から入り込んだ風が、フワリと髪を弄んでいく。
お互い決して目を反らす事は無く、重苦しい沈黙があたりを彷徨った。
気がつけば、アスランの顔からは笑みが消えている。
「ずいぶんといい面してるんじゃない。」
「それは、皮肉と受け取っていいのかな?」
「心外ね。あたしは褒めてあげたのに。」
「・・・・本当に君は、飽きないね・・・」
「どうして、気付いたの?」
「さぁ・・・・」
昔の自分のようだから・・・という言葉は胸の奥に消えていった。
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