世界は今、ゼロになる。















01 見上げた空は何色か
















変わることのない毎日。

繰り返される朝。

退屈な学校。

騒がしい教室。






「ほら、早く席に着け。」



朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った。

一歩遅れて担任のフラガがお決まりの台詞とともに姿現す。

完全にマニュアル化している挨拶を済ませ席に着くとは窓から空を見上げた。



これが、いつもの風景。







「ちょっと、!!」



何も変わらない、ただ時間を消費するだけの一日が始まるはずだった。

しかし今日はいつまでたっても騒がしい教室と、前の席に座るフレイの剣幕に少なからずとも違和感を感じる。

はしぶしぶといった動作で顔を上げた。





「転校生、超美形の!!」





いつの間に、間違いなく平穏な日常を壊すようなニュースが発表されたのだろうか。

そんな事が起きていたなんて知る由もなかった。

後の席のと前に立つ転校生を交互に見るフレイの目はキラキラと輝いている。







「あたし、興味ない・・・」

「えぇっ!!なんで!?」

「なんとなく。」

「絶対かっこいいからっ!!」

「・・・・」





淡々とは言い返すと再び空を見上げた。

フレイがネチネチと文句を言っているがそんなこと気にしてたら、キリが無い。

それにこのクラスに人間が1人増ても減っても、自分が気にかける理由は無かった。

そんなやつ、暇な人間が相手をすればいい。




季節はずれの転校生という言葉がぴったりな高校2年の11月。

秋晴れと冬が入り混じったような空が、確かにそこにあった。







   *






転校生の自己紹介が終わり、担任の話も終わると教室は再び蜂の巣をつついたように煩くなる。



が、そんな中でもその声ははっきりと聞こえてきた。





「あの、アスラン・ザラです。これからよろしく。」



「・・・・・・・です。」







顔をあげれば、そこには人当たりのそさそうな笑顔が浮かんでいた。

さも当然な顔で名前を告げたその見慣れないやつは、今までは空席だったの隣の席に荷物を置き始めている。





・・・こいつが転校生か・・・





「ゴメンね、この子誰にでもこんな態度だから。私、フレイ・アルスター。」

「いえ、気にしてませんよ。」


クルっと後ろを振り向いたフレイは恐らくそれなりにをフォローしているのだろう。

あまり意味はないが。

そのままちゃっかりと自己紹介も済ませ、品定めでもするようにアスランを眺める。



そんな視線がクラス中から届いているのもよそに、アスランは前の席のフレイと名乗った彼女に文句を言われているを見た。



まっすぐで、光に当たりキラキラと輝いている肩より少し長いハニーブラウンの色をした髪。

見るもの全てに冷たい印象を持たせるような、冬の湖のようなアイスブルーの瞳。

そしてどこにいても当たり前のように返ってきた自分への、今までに例がない反応。



彼女に、興味を持った。






   *






「ザラ君は彼女とかいる?」

「部活とかやってた?」




タイミングを図ったように次々と降りかかる質問。

煩い、とその一言に尽きる。




「あたし、保健室行く。」

「りょーかーい。」



静かなよく通る声ではフレイに言うと、ガタッと席を立ち教室を立ち去って行った。

こんな煩いところ、耐えられたものじゃない。

だから、転校生なんて邪魔なんだ。




誰もがの出て行った方向を見つめ、辺りにはほんの数秒間、沈黙が漂う。






「あっ、さん?いつもなんだよね、あれ。」

「でも成績いいし、モテるんだよね」

「ちょっと、ムカつく・・・」




きっと困ったであろうアスランの為か、ただ悪口を言いたかっただけなのか。

理由は後者なのだろう。


彼女らの言葉にアスランは、ふーんと適当に相槌を打った。

そして、もう何も見えない教室の扉をただ見つめた。





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