退廃し続ける街の中に1人立ち続ける私に、
未来は無かった。
横殴りの雨の中 横たわる君の姿
「・・・クッ・・・また随分と派手にやったな・・・」
「・・・あんただって、人のこと言えないじゃない。」
「そのワリには・・・いい目をしている・・。姫君は生血がお好みか?」
「ふざけんじゃないわよ」
顔に飛び散ったまだ温かい紅の鮮血を拭いながらは悪態をついた。
自分の真後ろに立ってこちらを見下ろしている知盛を睨みつければ、彼は皮肉めいた笑みを浮かべる。
所々に鮮血を浴びた銀色の髪が、太陽に透けていた。
「・・邪魔者のお出ましか・・・」
「まったく、数だけ揃えればいいと思って。」
「助けは入用か、・・・?」
「そんなもん、死んだっていらない。」
そういいつつも背中にふと感じる暖かさ。
それが知盛のものだと気付くのにはそう時間はかからなかった。
近づいてくる敵軍の足音と叫び声。
は右手に持った剣を空高く上げた。
どす黒く変色した血がこびりついた剣は、もうすでに幾人を切ってきた証拠。
しかし、鋭く尖った先端だけは鈍く眩しく光り輝いていた。
「さぁ、幕開けと行こうじゃないの・・・」
頭の片隅に一瞬、平穏な生活が蘇ったのは、きっと幻想だ。
*
――雨、やまないかなぁ・・・――
窓の外を見てそう思う。
まだ昼前だというのに廊下は薄暗かった。
昨日の夜から降り続いている雨は、一行に降り止む気配を見せていない。
むしろ段々と酷くなってるのではないのだろうか。
「ねぇ、?次の時間って何の授業だっけ?」
「えっ、あぁ、確か日本史。」
「うわぁ、めんどくさいなぁ・・・」
「ホントにね。あたし、きっと寝るわ。」
ありきたりな会話。
退屈だなぁ、と思った。
この世界に。
毎日同じ事を繰り返して、その中で少しずつ生活に色を塗っていく。
人間はそのサイクルの中で笑って、泣いて、恋をして、生きて、死んでいくのだ。
いつの日か、その愚かな事実に気がついたあたしは笑って、笑って、泣いて、絶望した。
そしてすっかりやる気の無くなったあたしは只管に願った。
世界が変わる日が来る事を。
そんな日が来る事は皆無だと分かっていても、あたしは愚かなサイクルの日々を送りながら願っていた。
「あっ・・・・」
ピチャッ、と制服のスカートから出た足に冷たい液体がかかって我を取り戻した。
そこは校舎と校舎をつなぐ渡り廊下で、木造の屋根が乗っかっているだけで殆ど外も同然だ。
目の前を友人たちが短いスカートを翻しながら寒い、と文句を言いながら歩いていく。
「あっ、先輩。」
「おはよ、有川くん。」
丁度、反対方向から歩いてきた将臣と目が合った。
隣で楽しそうに笑っているのは彼の幼馴染だろう。
純粋で、無垢で、絶望をしらない瞳。
羨ましいと思った。
「・・・どうしたの、君・・・。迷子・・・?」
そう声がして俯いてた視線を上げた。
そこには見た事も無い不思議な服を着た少年と、同じように不思議そうに話しかける望美、将臣、譲の姿。
急に、取り返しのつかない事をしてしまったような悪寒がの全身に走った。
ダメ、と喉から出かけた言葉は頭に残っていた理性によって止められる。
「あなたが・・・私の・・・・・神子・・・」
突如、目の前が眩しすぎる光に包まれた。
とっさに目を瞑れば、左右前後もわからない宙に投げ出されたような感覚に襲われる。
頭の中を支配するのは得体のしれない恐怖と、僅かな後悔だった。
世界は、変わった。
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070204