「明けましておめでとう、泰衡。」

「あぁ、そうだな。」


まだ温もりの残る布団から顔だけを出しての挨拶。

この時代の人はとても礼儀とか風習だとか目に見えないものを大切にする。

だから本当なら、ちゃんとした正装を着たりとかお辞儀とかで挨拶をするべきなのかもしれない。

けれど、こうして寝巻きのまま起き抜けの布団の中で泰衡と言葉を交わすことができるのは私だけの特権。


「本当は子の刻丁度に言いたかったけどね。」

「先に寝てしまったのはだろう。」

「だって、みんな酒豪ぞろいなんだから・・・。」


昨日、太陽が沈んだ頃始まった大晦日を祝っての宴はにぎやかなものだった。

普段は宴の席になど滅多に顔を出さない泰衡も、さすがに年越し宴となると出席しないわけにもいかずに。

高館にいる望美や八葉も客人として席が設けられ、そうなると必然的にも付いていくことになる。

「あまり飲まないように」

という先を見越した泰衡の言葉も虚しく、半分出来上がった望美や将臣に飲まされたは眠ってしまっていたらしい。

気が付いたら朝、というわけだった。


「俺はお前に、飲むな、と忠告したはずだったがな。」

「なっ!! あれは望美ちゃんとかが無理矢理・・・・」

「知っている。今日は、気をつけろ。全く、お前にあんな酒癖があるとはな・・・。」

「な、なにかしたんですか、私!?」


おどろいて顔をあげようとするが、いつの間にか腰と頭に回っていた泰衡の手がそれを許さない。

逆にギュッと引き寄せられた。

触れた手や顔、身体全体から伝わってくる温もりと鼓動。

首に触れる泰衡の黒い髪。

それだけで早くなる鼓動はきっと、これからも慣れることはない。

なんだかよくわからないけど、これでいい気もする。


「・・・今年もよろしくね。」

「・・・あぁ。」






080101

明けましておめでとうございます。
1年の始まりはやっぱり泰衡で!!
いつか主人公の酒癖について書けたらいいなー。