「結婚してくれませんか?」


戦艦というすごくシチュエーションの悪いところで、告げた言葉に君は真っ赤な顔をして



「はい」


と、言ってくれたね。

大きな傷痕を残した戦争は終結して、僕たちは新たな道を歩こうとしていた。












誓いの墓標












「私・・行きたいところがあるの。」



そう、から通信が来た。空には人工的な星が輝いている時間に。



「いつ、どこに??」


「明日、お墓に。」


「・・・えっ・・・」



の口から出てきた言葉は予想外のもので、俺の口からでた言葉はあまりにも滑稽だった。

なんで気づかなかったのだろう。 が泣きそうな顔をしていたことに。



「じゃぁ、決まりね。 明日10時にいつものところで待っているから。」



アスランがポカンと口を開らいていると、はいつもの笑顔で一方的に約束を取り付けた。



「大丈夫、アスラン?」


「・・ぇ・・なに?」


「あ・・大丈夫ね。 じゃあ、また明日。」


「うん・・・」



はときどきこうだ。

妙に甘えてきたり、強引だったり。

俺は真っ暗になった画面を見つめながららそんなことを考えていた。













翌日10時、15分前に待ち合わせ場所 ―――時計台の下・・・にアスランが行くと。めずらしくというか初めての方が先に来ていた。

噴水の前にあるベンチに座って、水で遊んでいる。






「アスラン!!」



アスランが名前を呼ぶとは嬉しそうに振り向いてニッコリと笑う。



「今日は、アスランより速かったvv」


「今日は、だろ? これからもこれくらいの時間に着てくれば嬉しいんだけどね。」


「無理無理。 さぁ、行こう!!」



そう言ってはエレカに向かって歩き出した。そんなの後ろを追いながらアスランはふと思う。


待たせるより、待っている方が好きなんだなぁと。


が一生懸命走ってくる姿が好き、・・・と。








!そっちは違う・・」


「知ってる! でもちょっとだけだから。」



ユニウスセブンや、戦争で亡くなった人たちが眠っているお墓につくと、は墓石のあるところとは別の道へ足を向けた。


舗装されていない道を、は楽しそうに歩いていく。


そのあとについていったアスランが、開けた視界に見えたのは、真っ白な花畑。


そして、しばらく姿が見えなかったは、その花を両手いっぱいに抱えて、ひょっこりとアスランの前に姿を表した。



「ホワイトスターっていうの。 信じあう心っていうのが花言葉なんだ。」


「へぇ・・・」


「行こう!アスラン」



そうがアスランに笑いかけると、は先ほどとは違う、道を歩って行く。

木々の間を抜けて、たどり着いた先は、アスランたちが目指していたお墓だった。





「どうやって、こんな道なんか見つけたんだ?」


誰もが思うであろう台詞をアスランは口にする。


「えぇと・・・道に迷ったら偶然ね・・・」


まさにだ。

にしかできないだろう。



らしい。」



そう、アスランが言うとは恥ずかしいのか下を向いてしまった。









「よし、これでラスト。」


そう言いながらは、『パトリック・ザラ、レノア・ザラ』と書かれた墓に花を置く。

今まで、ニコルたちやの両親などたくさん回って来たがこれで最後だ。



空が茜色に染まっている。



「私ね、もうここに来ることはないと思っていた。」

ポツリとが喋りだす。

悲しそうな顔で。



「えっ・・・」



「軍に志願したときに、両親が死んでから始めてお墓に来たの。それで・・・両親を殺した奴らを殺して・・・私も死のうって誓った。」

は、墓に供えた花びらを触りながら、小さな声で言う。



「私みたいのは・・・幸せになっていいのかなって。 何人もの人を殺してきたのに・・・」


そう言ったの声は震えていて、瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。


今のは、触れたら壊れそうで・・・でも消えてしまいそうなほど儚く、アスランは感じた。




「私・・・幸せになっていいのかな? アスラン・・・」




は、答えを求めるようにアスランの方を向く。

アスランは迷わずにを抱きしめた。 

でないと、消えてしまいそうだった。




が・・・幸せになるのが、亡くなった人へのためじゃないのか?」


「・・・うん・・・・」


「その人の分まで、幸せにならなきゃいけないんだ。 だから、俺が・・君を必ず幸せにするから。」


「・・・本当に?・・・」


「・・・必ず。 約束するよ。」


「絶対ね。」


「うん。」






もう二人の間に言葉はいらなかった。


白い花びらが風により舞い上がったとき、 二人の唇が重なった。







051018
アスイザ聖誕生祭にアップした作品。 難しかった・・・