Epilogue
春の、暖かい風が吹きわたる。
過去に別れを告げて、新しい生活も落ち着いてきたころ。
僕たちは二度目の出会いを向かえ、二度目のさよならを決めたこの地に立っていた。
休日のためか、人の少ない学校へと足を踏み入れる。
「制服着てないと変な感じだね、キラ。」
「うん、なんか悪い事をしているみたい。」
思わず視線を合わせて、クスッと微笑みあう。
まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。
手と手を取り合って、心から笑える時が来ることなど無いと思っていたのに。
「キラ、教室行くんだよね?」
「えっ、うん。」
「・・・どうかした?」
ちょっと考え事してた、と言って再び歩き出す。
時折すれ違う制服を着た生徒達からは、好奇の視線を向けられた。
それに加え、1年以上の間があるのにも関わらず女子生徒から声をかけられるキラは流石だった。
「やっぱりキラって、どこに行ってもモテるよね・・・」
「・・・それって嫉妬?」
「ち、違う!」
慌てて目をそらして、そう言ったは急いで歩き出してしまう。
そんなの姿にキラはまた微笑むと、その後を追った。
そうしているうちにたどり着いたのは、1年半前まで自分たちが使っていた教室。
どことなく雰囲気は変わっているが、何故だか少し懐かしさを感じた。
「やっぱり、人が違うとクラスも変わるね・・・」
「そうかな。僕は変わってないように見える・・・」
変わったのは表面だけ。
きっと、内側は何も変わっていない。
は、小さいころから意地っ張りで、その癖泣き虫で、困ったように笑う仕草も。
その全てが愛しいと思う僕も。
何も、むかしと変わっていない。
「、大好きだよ。」
「・・・キ、キラ!?」
後ろから、二度と話さないようにときつく抱きしめる。
小さい頃はほとんど変わりなかった身長。
10年以上の空白は思ったよりも大きくて。
抱きしめた腕の中に、は簡単に納まってしまった。
唯一、僕とが変わったところ。
「ねぇ、?僕がいない間、寂しくなかった?」
「・・・そんなこと、言わなくてもわかってるでしょ・・・?」
「言って。ちゃんと、の声で聞きたいんだ。」
「・・・寂しかったよ。キラに、逢いたくて逢いたくてしょうがなかった・・・」
後ろから抱きしめられているせいで、キラの表情は見えない。
わかるのは、首筋にかかる吐息の熱さと、この空間には2人だけしかいないということ。
「キラ、もういい加減に・・・」
「だめ。」
これ以上このままでいると、恥ずかしさで心臓がどうにかなってしまいそうで。
しかし、腕の中から抜け出そうともがけばもがくほど、力は次第に強くなっていく。
「・・・?」
「な、なに・・・?」
一瞬腕の力が弱まったと思ったら、腕を引かれる。
気が付けば、見上げた先にはキラの顔が。
今度は真正面から抱きしめられていた。
抗議の声を上げようとしたが、いつになく真剣なアメジストの瞳に思わず黙り込んでしまう。
全てを見透かされているような気がして、思わず俯いてしまう。
「、僕はもうどこにもいかないから。だから、もずっと僕の隣にいて?」
「キラ・・・」
「約束する、絶対に。だからお願い、ずっと僕の隣にいて・・・」
「私も、ずっとキラの隣にいたい・・・」
そう言ってから気付く。
自分はまた、どれだけ恥ずかしい台詞を言ってしまったのだろうか・・・
恐る恐る顔を上げれば、目の前にはキラの嬉しそうな笑顔が。
「、顔真っ赤だよ?」
「し、知らない!!」
そんな僕らが少しだけ変わったところは。
君に思いを打ち明けたこと。
永遠に、君が僕の隣にいると約束したこと。
そして、もかしも今もこれからも変わらないことは。
「、愛してるよ。」
「キラっ!?」
僕と君の気持ちだけ。
070518
キラの誕生日にあわせて、ラブソングのエピローグです。
完結後の2人はこんな感じになってればいいなぁ、ということで。