final
あれから1年半がたった。
キラと再会した夏の終わりも。
突然の別れがあった冬の始まりも。
もう1度巡った季節はその日々を追い越して、今日、私はこの学校を卒業する。
「寂しくなるね、これから・・・」
「ほら、泣かないでよ2人とも。私も泣きたくなっちゃうじゃん。」
「また逢えるから、ね。」
"また僕たちは巡りあえる"
それはいつの日を想って、キラは言ったのだろうか。
あの日を境に、キラは学校からもこの街からもいなくなった。
転校だとか留学とか、たくさんの噂は流れたが真相は誰も知らなかった。
放心状態になった私を救ってくれたのは他ならぬカガリとミーアだった。
「この制服を着るのも今日で最後なんだね・・・」
「思い出がいっぱい、ってね」
「そうだよな・・・」
そして今、私はこうしてまた笑える。
キラの事は今でも好きだ。
どうしようもないくらい、むしろあの頃よりも強く、好きだ、と想う。
逢いたい、そう願わない日は一日たりとも無かった。
また巡りあえる時、を信じて疑わなかった。
「それじゃあ連絡しろよ、ちゃんと。」
「また今度、遊ぼうね。」
「うん、また逢おうね。」
すっかり話し込んでしまって、学校を出たのはもう夕方だった。
あの日と同じ、輝くようなオレンジが照らし出す夕暮れの空。
通いなれた道を歩くのも今日で最後だ。
キラと一緒に帰ったり、泣きながら走っていたなぁ、などと想う。
この道を抜ければ大通りに出て家までもうすぐだ。
そしてふと、蘇るあの日の言葉。
「僕たちがもっと大きくなったら、またここで逢おうね。」
それは十年ほど前にした約束。
まだ子供だった、ただ明日を信じていた私たちが交わした、たった一つの約束。
誰かが自分を呼んでいる気がした。
確信の無い期待が体中を巡りあがる。
そしては走り出した。
「」
歌を口ずさむようにそっと小声で呼んでみる、愛しい人の名。
「」
君はもう忘れてしまったのかな。
この丘の上で君と交わしたあの約束を。
こうして君と離れて、気付いた。
の存在がどれだけ大きかったか、って。
僕は君を泣かせてばかりだ。
守る、なんてかっこつけて言ってみても。
君を傷つけているのは僕自身。
そんな僕に、気持ちを告げる資格なんてないのかもしれない。
それでも、伝えたい。
聞いて欲しい、君だけに僕の本当の気持ちを。
「・・・キラ」
心臓が煩いくらいに響く。
これは、夢なんかじゃない。
あの日、あの時、丘の上で交わした約束。
間違えるはずも無い、大好きな貴方の背中。
予感は確信に変わる。
「・・・キラ、なんでしょう・・・?」
声が震える。
今すぐにでも傍に行きたいのに、足が動かない。
一定の距離を保ったまま、ゆっくりとキラが振り向いた。
一瞬、驚いたようにその瞳が見開かれて、優しく微笑んだ。
まるで時が止まったかのように風が止まる。
気付けば、は走り出していた。
「キラ・・・・、キラァっ・・・」
「ごめんね、。一人にさせて・・・ごめん。」
「ずっと、ずっと逢いたかった・・・」
「」
無我夢中でキラに抱きついた。
もうどこにも行かないように。
ようやく掴めたこの手を離さないように。
「、覚えている?昔、ここで交わした約束を。」
「・・・覚えてるよ、忘れたことなんてなかった・・・」
「僕たちはまた、ここで巡りあえた。だから、その約束を今・・・」
「・・キラ・・・」
強く、強くキラに抱きしめられたまま、その言葉は染み渡るように響く。
暖かい春の風が2人を優しく包む。
規則的に聞こえる鼓動は、キラがここに存在していることの証。
「、君の事が好き。誰よりも愛している。」
「キラ・・・・。私も好きだよ、ずっと・・・」
「だから・・・」
抱きしめられていた腕が離れ、真剣な眼差しの瞳から目が離せなくなる。
偽りの無い、まっすぐなその言の葉。
何にも変えられない、愛の言葉。
そっと唇に乗って伝わる、キラの想い。
何度離れても、僕たちはまた巡り合う。
それが僕たちの運命。
握ったこの手は、絶対に離さない。
神様に誓おう。
君を、
貴方を、
永遠に愛す、ということを。
end
070405
反転であとがきがあります。
まず、ここまで付き合ってくれた皆さんにお礼を言いたいと思います。
本当にありがとうございました!!
気付けば連載を始めて8ヶ月が経っていました。
突発的に始まった作品だったのにも関わらず、アンケートや拍手などで沢山の感想を頂きました。
本当に嬉しかったです。
ここで「君に捧ぐラブソング」という話は終わりを迎えます。
皆様の中にはこれからのヒロインとキラのエピソードなどもある人もいるかもしれません。
お話は終わりですが、どうかヒロインとキラを忘れないでやってください。
それでは、今まで本当にありがとうございました。
今後とも「Realist」と私をどうぞよろしくお願いします。
2007年4月5日 エレン拝