eleven
思わずはっ、と息を飲む。
まるでその場に根が生えたのが如く身体は動かなかった。
「・・・うそ・・でしょ・・・」
口から漏れるのは声とも息ともつかない。
握った手に汗が滲む。
鼓動が異常なほどに早くなる。
絶望、という2文字が頭の中を支配していた。
「・・・僕は・・・」
それまで静かだった教室の中にキラの声が木霊する。
女子生徒の方がピクリと反射した。
キラと女子生徒は何か話している様子だったか、それはの方までは聞こえてこなかった。
そっと、キラの手が動くのが見えた。
ゆっくり持ち上げられたその手は、彼の目の前にいる女子生徒へと向かって動く。
を抱きしめた、その手は。
「・・・っ・・・」
それ以上見てられなくなって。
見てはいけない衝動に駆られて。
はその場から逃げるように走った。
上手く動かない足を必死にに動かして、何度も転びそうになって、行き場所も考えずにただ走った。
不思議と涙は溢れてこなかった。
ただ哀しくて。わからなくて。
「私はなんでここにいるのっ!?」
そう叫んだ声は誰にも届くことはなかった。
「あっ、!!お帰り。」
「忘れ物はちゃんとあった?」
結局、教室に帰ってきてしまった。
笑って、つい先程と変わらない笑顔でカガリとミーアが出迎える。
そうだ、ちゃんと、笑わなければ・・・
「・・・うん、あったよ・・・ 」
「・・・?何かあったの・・・?」
「えっ・・・?」
「気づいて無いのか?お前の顔、今にも泣きそうだぞ・・・」
先程の光景が脳裏に蘇る。
そのたびに胸が締め付けられて、苦しい。
それでも今ここで泣くわけにはいかなかった。
優しい彼女らは、きっと何も言わずに思う存分自分を泣かしてくれるだろう。
でも、それではいけない。
それでは、今までの全てがきっと無駄になってしまう気がする・・・
「何もないよ。ほら、走っていったからそのせいだって!!」
「そうならいいんだけど・・・」
明らかに腑に落ちない顔をしてミーアがつぶやいた。
しかし、もうそれ以上詮索しない事を決めたらしい。
笑っての方を見ようとした、そのときだった。
「あっ、キラ。お前音楽室で告白されていただろ?」
「で、返事は!?」
教室の前の方で声が上がる。
キラが教室に帰ってきたようだった。
音楽室、という単語に思わずカガリとミーアがの方を振り返る。
思いっきりは唇をかんだ。
どうして、どうしてこんなに酷いことばっかりするのだ、神様は・・・
「結構可愛い子だったんだろ?」
「でも、ほら。キラにはがいるじゃん。」
笑い声が教室に響く。
カガリとミーアの視線はまるで凍りついたようにに向けられていた。
顔を上げれば、キラと視線が混じる。
キラは、優しく、笑った。
何かが終わる音がした。
「そうだね。」
「えっ?」
そう呟いたキラの視線の方に、自然と教室中の視線が集まる。
その先は、ただ立ち尽くすの方へと。
「は僕の大切な幼馴染だもんね。」
ねっ、と言って微笑むキラにどう反応していいのかわからなかった。
一瞬静まり返った教室は、今まで以上に騒がしくなる。
「・・・・そうだね、キラ・・・・」
誰にも聞こえないようにつぶやいたは、そっと笑った。
泣きそうに、静かに笑った。
「私の存在意味って・・・なに?」
070401
わかりずらいので説明します。
さんがキラに告白されても喜べないのは、簡単に言うとキラが本当に自分のことを必要
としているのはわからないからです。
幼馴染という壁を超えられないのに急に抱きしめられたりとか。
不安で不安でしょうがない、って事です。