eight
「、ちょっと来て!!」
「えっ、な、なに!?」
朝の昇降口、人並みを縫う様にして出てきた腕はがっしりとの手首を掴んだ。
その手は、状況が今一理解出来ていないを気にする事も泣く思いのまま引っ張っていく。
その人物の正体がわかったのは、人ごみを抜けてしばらくたってからだった。
「カガリ・・・、朝からどうしたの!?」
「お前・・・」
「・・・・」
「お前、キラと付き合ってるって本当なのかっ!?」
何か重いもので後頭部を殴られたような鈍い衝撃がを襲った。
ようやく振り返って見えたカガリの顔は、怒ってるような哀れんでいるような表情だった。
握られた手首が、痛い・・・
「何それ・・・・」
「だから、本当なのか!?」
「それは・・・」
先程よりも大きくなったカガリの声で廊下を歩いていた数人がこちらを振り向く。
視線に気付いたのか、カガリの手がの手首から離れた。
それでも、カガリの強い視線は自分を貫いたままだ。
「違うよ・・・。私とキラは・・・幼馴染、それ以上でもそれ以下でもない・・・。」
「本当に?」
「うん。」
「そうか・・・。それなら、よかった・・・」
ようやくカガリが笑った。
それでも、まるで胸の中に鉛があるようなこの息苦しさは何なのだろう。
「あの、どうしてカガリはそんな事聞くの?」
「お前知らないのかっ?! すごい噂だぞ、今・・・」
「そんなっ・・・・・」
「丁度キラが元カノと別れた頃から、急にお前と仲良くなりだして・・・。それで・・・」
「なんで、そんなの・・・。違うのに・・・」
「おい、大丈夫かっ?!」
もう何も聞きたくなかった。
頭のなかを駆け巡るのは間違った真実と、歪んだ気持ち。
これはあまりにも酷すぎる仕打ちではないのだろうか。
どんな立場でも。
幼馴染としてだけでもいいから、キラの隣にいることができれば、それだけでよかったのに。
「あたしは・・・、キラが好きなだけなのにっ・・・」
「・・・」
「・・・・それなのに、なんでこんなっ・・・」
「泣いていいんだよ、・・・」
廊下にしゃがみ込んでしまったをそっとカガリは抱きしめた。
震える肩が、小さく漏れる嗚咽が、悲鳴を上げていた。
この小さな身体で一体どれだけの錘を背負ってきたのだろう。
「よく頑張ったな・・・」
どうか貴方だけは、幸せに・・・
061227