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”キラが今の彼女と別れたらしい”
その噂を耳にするにはたいして時間はかからなかった。
「そんなにビックニュースなのかなぁ。」
「もちろんよ!!」
「ミ、ミーア!?」
独り言だったはずなのに、気が付いたらあたしの前の席にはちゃかりとミーアが座っていた。
なんだか瞳が妙にキラキラしている。
こういう類の話、好きなのかなぁ・・・
「で、なんでそんなに盛り上がる必要があるの? タラシならこういうことってしょっちゅうでしょ?」
「・・・。あのね、キラが別れるってことは新しい彼女が出来たって事なの。」
「えっ!?」
「だから正確にはね、キラが別れた、じゃなくてキラの新しい彼女、にみんな興味があるの。」
なるほど、と思わず納得してしまう。
それにしても新しい彼女とは・・・・
「ねぇ、本当にキラに新しい彼女って出来たの・・・?」
「確信は無いけど今までも殆どがそうだったからね。」
絶望、悲しみ、哀れ。
そんな言葉が頭の中で浮かんでは消える。
頭の中がぐちゃぐちゃで何も考えられなかった。
「ねぇ、・・・?」
「・・・なに・・?」
「って、やっぱりキラのこと・・・好き、なの?」
言いにくそうに、でもしっかりとミーアはそう告げた。
その視線に耐えられなくて、あたしはそっと視線を外した。
「好き・・・なんかじゃないよ。」
「・・・そっか。」
そうだ。
好き、なんて特別な感情を幼馴染に抱くことなんてありえない。
今はただ、懐かしいだけ。
十数年ぶりに再会した大切な幼馴染だから、ちょっと戸惑ってるだけ。
それ以上、ミーアがに尋ねることは無かった。
その優しさに涙が出そうになった。
「・・?」
人の多い放課後の下駄箱。
ふと名前を呼ばれてはローファーを履きかけたまま振り返った。
「あっ、キラ・・・・」
視線の先には、自分の靴に手をかけたキラが静かに微笑んでいる。
思わず彼の隣に、噂の彼女がいないか確かめてしま自分が悲しい。
「どうしたの?」
「いや、偶々がいたからさ。家の方向も同じなんだから一緒に帰らない?」
「あたしはいいけど・・・」
そう言ってあたしはそっと周りを伺った。
転校してきたばかりの女子生徒。
片や、時の人と言わんばかりの有名人。
周りの視線が、痛い。
そして何より、こんな醜い感情を持った自分をキラに見られたくない。
キラに、嫌われたくない。
「それじゃあ決まりだね!!」
「あっ、うん・・・」
あたしの視線に気が付いたのだろうか。
キラはどこか疎ましそうな視線で周囲を睨みつけた。
その行動が以外で、それでも少し期待してしまう自分がいる。
先に歩き出したキラの後を追って出た外は、いつのまにか夕日が輝いていた。
どうして、素直になれないのだろう・・・
061204