four














学校へと歩くの足は重たかった。

まだ一日が始まったばかりだというのに頭上から焼けるような太陽の光が照らす。

転校2日目の朝からこうなんて、正直自分でも不安になった。

そして原因はただ一つ。

十数年ぶりに再会した、同じクラスの幼馴染。



「・・・はぁ・・・」

「溜め息つくと幸せ逃げるよ?」

「えっ、あっ!?」



不意に肩をたたかれ、は目を見開いたまま後ろを振り返った。

目の前には少し困ったように笑う、アメジストの瞳。



「アハハッ、すごい顔。」

「キ、キラかぁ・・・。驚かさないでよ・・・」

「だって、一人だけ違う制服だからすごく目立つんだもん。」

「しょうがないじゃん、転校が急だったんだから。」



止まっていた二人の足は自然と学校に向かって歩き出した。

時々吹く風は、まだ、暑い。



ってあの頃から、本当に変わってないね。」

「そう?」

「うん。笑い方とか、ちょっとした仕草とかさ。」



覚えていてくれたんだ、そう思うと自然と頬が緩んだ。

それと同時に、違う感情が心に浮かび上がった。

の歩調が次第に遅くなる。

不思議そうにキラがふりかえった。






「キラは・・・・」

「・・・・・・・?」

「キラは・・・、変わったね。」






そうだ。


キラも、この町も、全部変わったんだ。

十年という歳月はあまりにも短くて、長くて、残酷だった。

変わってないのは自分だけかも知れない・・・




「・・・・・?」

「あっ、キラ・・・」

「どうしたの?ぼーっとしてさ。」



キラに顔を覗き込まれ、はわれに返った。

どこか心配そうなキラの瞳に思わず見惚れてしまう。



「キラ、かっこよくなったよね。」

「えっ!?」

「いやぁ、思わず見惚れちゃったよ。」

「そんな、正面から言われると照れるよ・・・」



嘘ではなかった。


再会したキラは泣き虫のキラじゃなくて、気がついたら大人になっていた。

殆ど変わりなかった身長は、あたしより頭一つ分大きくて。

それでも、あたしの隣を歩くキラの横顔は紛れもなくキラだった。





ねぇ、あたしちゃんと笑えている?



キラが、キラの背中が、遠くに感じるよ・・・



061021