two




















「久しぶりだなあ・・・」



引越し用のダンボールに囲まれた部屋の窓を開けて、ベランダへと出る。

多少は時の流れによって変わった町並みだが、あの懐かしい雰囲気は変わる事が無い。

ベランダの左端へと寄れば鮮やかに輝く海が見える。




12年ぶり、だろうか。

父親の転勤で引っ越した町に戻ってきたのは。

引っ越した先の都会の街で仕事も一息つき、悩みの末再び戻ってくる事になった幼き頃を過ごしたこの町。




、早く荷物片付けて!」

「りょーかい。」




そう母親に促されて部屋に戻る。

一番手身近なところにあったダンボールをあけると、そこから出てきたのは丁寧に包まれた一つの写真たて。

そっと、はそれを持ち上げた。


「この写真・・・」


シンプルな額縁の中で、亜麻色の髪をした少年と幼い頃の自分が笑っている。

ずっと幼馴染として過ごしてきたキラと自身が。




そして思い出されるのはあの日の約束。


「次に出逢ったときには、僕と、結婚しよう?」


覚えているはずないか、と自分を嘲け笑う。

自分は今まで忘れたこともないのに。



彼が、今どこにいて、どうしているかも知らないのに。
彼が、自分の事を覚えているのかさえ定かではないのに。


ずっと抱き続けてきた希望を捨てることはできなかった。





























「本当に一人で大丈夫なのね?」

「平気だって!!つい一昨日行ったばかりだもん。」




夏休みシーズンも終わりを告げたのに、まだうだるような暑さが残る外をは歩き出した。

転校初日目の朝、とでも言うべきなのだろうか。

急に決まった転校のため、夏用の制服はまだ手元には無い。

その為か、Yシャツ姿の生徒の中にまぎれて一人異なった型の制服を着たには視線が痛い。
























コツン、コツンと二人分の足音が廊下に響いていた。

新しい学校に入り、向かった職員室で紹介された担任のフラガという教師の後を無言でついていく。




「そんなに緊張しなくてもいいぞ?まぁ制服が違うっていうのは肩身が狭いかもしれないがな!!」

「はぁ・・・・」




自分の気の抜けた返事を諸共せずに、彼は一人でしゃべり続けた。

クーラーもなしで開けっ放しになっている廊下の窓からは風ではなく波の音が入ってくる。





「さあ、着いたぞ?ココが今日からお前のクラスだ。」

「はい」




見上げた先には2−5と書かれたプレートがある。

そして一息つく間も無く、フラガが開けた教室の扉へと連れ込まれた。

好奇の視線が一気に自分に注がれたのが嫌でもわかる。





「その様子だとみんな知っていたようだがな・・・。見ての通り転校生だ。」

「あっ、です。制服が違うとかいろいろありますが、これからよろしくお願いします。」



とりあえず、御決まり文句のあいさつをする。

クラス中の人間が一斉に近場の人たちと顔を見合わせた。



「じゃあお前の席は窓際の一番後ろな。」

「はい。」



あいかわらずの視線の中、指定された席に座った。

誰もいない校庭がよく見える。




――逢いたいな、キラ・・・



今はそう思い続けることしか出来なくても




060818