one
「ほら、、泣かないで。」
「・・やだぁ!キラと一緒がいい!!」
「大丈夫。僕、ぜったいにのこと忘れないから、ね?」
キラ、と呼ばれた小さな男の子の服の裾を握って、、と呼ばれた女の子が泣きじゃくる。
下一面には海が広がる小さな丘の上。
「引越しなんてやだよ・・・、キラぁ・・・」
「・・じゃあね、こうしよう。」
自分の服の裾をずっと握り締めているの小さな白い手に、自らの小さな手を重ねる。
その仄かな暖かさにの涙で濡れた顔があがるとキラはその赤茶色の瞳に向かってニッコリと笑った。
「僕たちがもっと大きくなって、そしてまた逢ったらね、」
「・・・うん・・・」
「け、結婚しよう?もう、絶対に離れ離れにならないように。」
それはあまりにも無謀で傲慢で、儚すぎる約束だった。
「本当に?ぜったいに約束してくれる?」
「もちろん。神様に誓うよ。」
それでもまだは、信じられないといった視線をキラに向けた。
ふっ、とキラが笑う。
いつのまにかの涙は乾いたようだった。
「それじゃあ・・・これで・・・どう?」
「・・・・・・・!?」
それは突然のことだった。
キラの顔を再び泣きそうな表情で見ているの右頬に、そっとキラの唇が触れた。
傾きはじめた太陽が、小さな2人分の影を長く刻む。
「・・・キラ・・・?」
「今度逢ったときは、ちゃんと・・・ちゃんと唇にするから!!」
それまで誰ともしちゃダメだよ?
と、キラはに念を押す。
夕焼けのせいか、それとも違うことが原因なのかキラとの顔は赤く染まって見える。
キラが優しく笑顔を見せると、ようやくの顔にも笑顔が戻った。
「キラ・・、アタシのこと忘れないでね・・・」
「あたりまえだよ。ほら、もう泣かないの・・・」
再び、目じりに涙が浮かんだを苦笑しながらキラは頭を撫で続けた。
そして翌日、物心ついたころから僕の隣で笑っていたは遠い町へと引っ越した。
最後の最後までが握っていた僕の服は、涙と皺が残っていた。
060815