すがりつくための、理由。
出口が無い迷い
「何やってるんだろう、あたし・・・」
濡縁に腰掛けて、紅葉が舞う庭を呆然と見詰める。
この世界に来て1週間は経ったのだろうか。
怨霊として蘇った清盛やその他の将たちにも挨拶をして、今こうして得にやる事もない日々。
考えるのは、どうでもいいことばかり。
「・・・何をしている、こんなところで。」
「・・・知盛、まだお昼前だよ・・・?」
を拾ってきた張本人の知盛は何かにつけてに付きまとう。
そのくせして気配を消して歩くものだから、こうして後ろに立たれても気付く事が出来ない。
それに、まだ昼食前のこの時間に彼が起きているのはかなり珍しい。
「兄上が煩くてな・・・」
「あぁ、また将臣に怒られたんだね。」
「それで・・・・お前はここで何をしている。」
結局その質問に戻るのか、と心の中でぼやく。
まるでそれがあたり前のように知盛はの隣に腰掛けて、欠伸を一つ。
何を見ているのかわからない瞳は、真っ直ぐ前を向いていた。
「・・・考えてたの、あたし、ここで何してるんだろうって。」
「・・・・」
「元の世界でもそうだった。いつも自分の存在してる意味がわからなくて、それでもあたり前のように生きて。
世界が変われば自分の居場所もきっとあるんだ、って思ってた。けど、この有様・・・」
「それで・・・?」
「また、ここでも同じことを繰り替えすのかなぁ・・・ってさ・・・」
話しながらは空を仰いだ。
空は透き通るように蒼くて、何も映していない。
まるで、自分のように。
「・・・意味なんか、ないさ・・・」
「えっ?」
「居場所が欲しければ、自分で造りだすんだな。」
「・・・知盛・・・?」
クッ、と知盛は笑って、眠そうな顔とは裏腹に軽い仕草で庭に降り立った。
その腰に付いている2本の刀が、カチャッと音を立てて彼の手に納まる。
「命の華が散る瞬間、俺たちは生きている・・・そうだろう、?」
「・・・なに、を・・・」
知盛と同じように庭に立ち上がった目掛けて、今まで知盛が持っていた刀が飛ぶ。
やっとの思いでがその剣を取ったのを一瞥して、知盛は残ったもう一本の刀を鞘から抜いた。
眩しく光る銀色に、蒼い空が映し出される。
「、お前のその飢えた瞳・・・。お前の居場所はここじゃない、だろう?」
「・・何を言って・・・」
「もっと貪欲になれ・・・。いずれ、お前は自ら求めるだろうがな・・・」
ギラリ、と妖しく光る刀の先を突きつけられては何も言えなくなった。
身体を動かせば血が流れても可笑しくない距離にそれはある。
知盛が楽しそうに上で笑っている。
「さぁ、抜けよ、刀を・・・」
「・・・あたしには、無理だよ・・・」
刀を握る。
それは人を、命を奪うことなのだろうか・・・。
命を散らせるのに理由があったとしても、それは許される事なのだろうか。
「・・・何も変わらないが、それでいいのか?」
「・・・・この野郎・・・」
知盛が自分の事を煽っていたなんてとっくに気が付いていた。
しかし結局、自分は理性とプライドの衝突の結果、プライドを選んだ。
きっとこれは、他愛ない戯れだと信じて。
慣れない布の感触を掌に感じながら、ゆっくりと知盛に渡された刀を鞘から抜く。
刀は予想していた以上に重かった。
それは、この刀で冥府へと送られていった人の命なのかもしれない。
「クッ、楽しませてくれるんだろう?」
「知らないわよ、だいたい刀なんて生まれて初めて持ったんだからね!!」
「俺が教えてやるさ、手取り足取りな・・・」
「・・・今、寒気がした・・・」
クッ、とまた笑った知盛に気付かれないよう、少しだけも微笑んだ。
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070422
知盛と絡ませようとして、撃沈