まるで鳥になったみたいだと思う。
進化した人類は優れた知恵を授かったが、飛ぶ能力は得る事はできなかった。
しかし人類は知恵を駆使して、この大空を自由に飛ぶことのできる技術を作り上げた。
空高く上がったフラッグから見える景色ほど美しいものは無い、とは思う。
まるで自分の四肢のようにフラッグを操り、誰の手の届かないところまで舞い上がる。
小さい頃から夢見た世界は今、自分の手の中にあった。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
演習を終えたフラッグを格納庫に戻して、はヘルメットを取る。
時折僅かに吹いてくる風が火照った体を冷ますようでとても心地いい。
いくら空調システムが付いているコックピットとは言え、やはり快適とまでは言えないのが現状だ。
早くこの身体に張り付くパイロットスーツを脱いで、シャワーでも浴びたいものだ。
フラッグが出入りするだけあって大きく開かれたシャッターの向こうに見える滑走路から続く青空がとても綺麗だった。
「なかなかの結果だったな、。」
「エーカー中尉!」
彼も今フラッグから降りたばかりなのだろうか。やはりヘルメットを片手にパイロットスーツのままだ。
暑そうに首元を緩めて、と同じように青空を眺めた。
がMSWADに移動になってから数週間が経つが、未だにこの上司の事はよくわからないままだ。
むしろ、日々が経つごとにわからない点が増えていく気がする。
最初は軍曹、と呼んでいた名前を気がつけばと呼ばれるようになっていた。
けれどグラハムと一緒にいて悪い気もしないのも事実だ。
「さすがMSWADに引き抜かれただけある。私もぼちぼちしてられないな。」
「中尉ほどじゃないですよ。中尉のフラッグは・・・とても綺麗なんです、なんとなく。」
「・・・・不思議な事を言うな、君は。」
「あ、別に変な意味じゃなくて・・・すいません。」
気にするな、と言ってグラハムは笑った。明るい金髪が光に反射してキラキラ光る。
彼はとても青空の似合う人だと思う。地上でも、空でも。
フラッグの機体性能をギリギリまで引き出して飛ぶ技術と、飛びぬけて上手い操縦テクニック。
ユニオンのエースと呼ばれる彼の隣で、自分もフラッグを駆っているのだ。
改めて気がついた事実に、心臓が跳ねる。
グラハムが立っている自分の左側の手が、変に暑かった。
「は、フラッグが好きか?」
「はい。憧れだったんです、子供の頃から。いつかこうして空を飛べたらいいなぁ、って。」
「・・・そうか。私も空は好きだ、何も縛るものはないからな。」
「鳥になったみたいですよね。」
また、そうだ。謎が多いグラハムが時々見せる影のような顔。
そしてその分また私は、彼を知りたいと思ってしまう。
手が届かないものだからこそ、手を伸ばしてしまう。
「私達は空から生まれて、空へ還るのかもしれないな。」
ぽつり、と呟いたグラハムの横顔は笑っているような泣いているような顔をしている。
また、一段と大きく心臓が跳ねた。
フライングスカイ
そして私はずっと彼の部下として、彼を守ろうと思った。
080413
何故だかヒロインの片思いシリーズみたいになってる・・・
グラハムの過去が非常に気になります。