「・・・なんか皮肉だよね」
「え?なにが?」
「今回のシングルのジャケットが結婚式をイメージしたものだなんてさ」
「はい・・・?」
忘れ去られた誕生日
プラントにある撮影所にて、シングルのジャケット撮影の仕事が本日は入ってい
た。
冒頭でキラがに漏らしていたように、今回は『結婚式』がジャケットのテーマ。
メンバーは全員、白のタキシードを身に纏っていた。
ステラは一人女の子ということで、純白のウエディングドレス。
それがまた似合いすぎていて、ラクスもも思わず鼻血を吹きそうになっていた。
そんなステラを見ていたキラは、ブーっと不貞腐れたような表情を浮かべていた
。
「キラさん・・・なんですかその顔は」
「あぁ・・・シン。居たの?」
「ボーカリストとしても、アーティストとしても、ファンがその顔見たら泣きま
すよ」
「顔は僕のものなんだから、どういう顔したって僕の勝手でしょっ」
意味のわからないこじつけをシンに返すキラ。
先程よりももっと不貞腐れた顔で、ジーっとステラを見つめていた。
否、正しくはステラのウエディングドレスだった。
「ちょっと・・・キラ?」
「の鈍感」
「は?」
「僕がどうしてこんな態度でいるかわかってないよ」
「はぁ・・・?」
プイッと顔を背け、キラは撮影する教会へと向かっていった。
つっけんどんな態度をとられたは、未だにどうして機嫌が悪いのかわかっていなかった。
そんなを見かねたラクスが、そっと後ろから小声でヒントを与えた。
「。今日は何の日だと思います?」
「今日・・・?えっと今日は・・・」
5月の・・・18日・・・
「え?!5月18日っ?!」
「正解ですわ♪」
「え・・・えぇぇぇっ?!嘘っ?!」
「嘘じゃありませんわよ?」
ニコニコといつもの笑顔を浮かべるラクス。
それとは真逆に、サァーっと血の気がひいてゆく。
5月18日といえば、何を隠そうキラの生まれた日。
キラがこの世に生を受けた大切な大切な・・・
「誕生日だっ・・・!!」
は慌ててキラへとお詫びも兼ねて、気持ちだけでも伝えようと駆け寄る
。
だが今は撮影の真っ最中で、そんなことでを取り合ってくれるスタッフは誰一人おらず。
仕方なく、撮影が終わるまで大人しく待つことに。
撮影を終えたメンバーたちが、続々と帰ってきた。
キラは相変わらず、ステラの着るドレスを見つめていた。
そんな視線に気づいたステラは、チラッとキラを見て不思議そうにしている。
「キラ・・・どうしてドレス見てるの・・・?」
「そのドレス・・・が着ても似合うってステラも思わない?」
「が・・・?」
「そう。のウエディングドレス姿」
「・・・似合う・・・。可愛い・・・」
「やっぱりステラもそう思うんだ?」
「うん・・・うん・・・!」
ステラとキラは、二人して顔を緩ませて笑う。
壊れ気味の二人の姿を目の当たりにしたイザークは、かなり表情が引き攣ってい
たとか。
そんな二人の元へ、慌てて駆けてきた。
先程まで話しをしていた人物の登場に、キラもステラも表情を明るくさせた。
「「・・・!」」
「え・・・なに・・・?二人して・・・」
「もウエディングドレス着てみようよ?」
「はっ?!」
「ステラも・・・のドレス・・・見たい」
キラに言われるのは違和感を感じたが、ステラに言われては着ないわけにはいか
ない。
しかしその前に、はキラに伝えなければいけないことがあるのを思い出して、口を開いた
。
「あ・・・キラ」
「なーに?」
「誕生日おめでとっ」
「えっ・・・?」
「『え?』じゃないよ!私が言わなかったから不貞腐れてたんでしょ?」
「あ・・・うん・・・」
まさか思い出してくれるとは思っていなかったキラは、突然の言葉にキョトンと
していた。
「それで・・・プレゼントは何も用意してなくてごめんね」
「ううん。僕は思い出してくれただけで・・・」
『思い出してくれただけでいいよ』と言おうとしたが、ある提案がキラの中に浮
かんだ。
そしての肩をがしっと掴み、真剣な眼差しでに話した。
「プレゼントになること、あるよ」
「・・・へ?」
「ウエディングドレス着て、僕とツーショットで写真撮ってもらおうよ」
「え・・・」
「と結婚したみたいで僕は嬉しいよ」
そんな恥ずかしいこと出来るわけないと思っていたが、何せよ今日はキラの誕生
日。
しかもつい先程まで忘れていたという前科がある。
仕方なくは、キラの頼みごとを聞いてあげることに。
ステラの着ていたドレスを借りて、はキラの前へと姿を現す。
純白で肩を出した形のドレスは、にとてもよく似合っていて綺麗だった。
それを見たキラは、珍しく頬を染めていた。
ステラはパァッと表情に花を咲かせて、『綺麗・・・』と連呼していた。
「可愛い・・・っていうか綺麗・・・」
「あ・・・ありがと////」
いつになく素直に感想を述べるキラ。
キラがこんな調子だと、の調子まで崩されるような気がする。
しかし次の瞬間、の体はフワッと宙に浮くような感覚に捕われる。
それが、キラにお姫様抱っこをされている状態だと気づくのに時間がかかった。
「キ・・・キラっ!降ろしてっ・・・」
「だめ。今日は僕の誕生日なんだから僕にいっぱい尽くしてよ?」
「なっ・・・////」
さり気なく爆弾発言をしたように聞こえたが、キラはお得意のスマイルでごまか
そうとする。
お姫様抱っこをされた状態のは、すでに捕獲された獲物状態で。
それを周りで見ていたラクスは、笑顔を浮かべるだけで見て見ぬフリをするのだ
った。
「もう絶対キラの誕生日を忘れてたって気づいてあげないんだからぁっ・・・!
!」
本日、の声を聞いたのはこれが最後だったとか、そうでないとか。