季節はずれのサンタクロース
本日、9月1日は『DESTINY』メンバーであるシンの誕生日。
キラの時は何故か一緒に写真を撮って、イザークの時は携帯電話をプレゼントし
てあげた。
今回はどういったプレゼントをあげようか。
イザークの誕生日から、次の月はシン、その次はアスランと・・・立て続けに誕
生日が重なっている。
金銭的にもピンチのにとっては痛い出費が嵩む。
なおかつ、全員に違ったものを贈らなくては・・・とプレゼントする内容にも頭
を悩ませなければならない。
今の季節は「夏」というだけあって、まともに思考が働かない。
再びどうしようかと頭を抱えながら唸っていると、テレビのCMが耳に飛び込ん
できた。
『毎日暑い日々が続く今年の夏!しかし皆様に朗報です!本日午後2時より、先
着100名様に雪をプレゼント!』
「"雪"・・・?こっ・・・これだっ!!」
お金もかからず、財布に優しいプレゼント。
しかも暑い夏にはひんやり涼しくなれる『雪』とくれば、シンにとってもにとってもありがたいハズ。
は現在の時刻を確認すると、ダッシュで雪を貰いに走っていった。
「あと30分しかないじゃないのっ!」
とかなんとか文句を言いながらも、足はちゃっかり全身全力のパワーで走ってい
たのは無理もない。
なんとか予定時刻に目的地に着くことに成功した。
あのCMを見ていた人が少なかったのか、人手はまばら。
難なくお目当ての雪を手に入れることが出来てホッっと胸を撫で下ろす。
しかしこれだけではプレゼントとは言えないだろう。
一体この雪をどうしたものか・・・と雪の入った袋を眺めながら街を歩いていく
。
ふとガラスのショーケースに飾られた小さな雪だるまが目に入る。
スキー関係のショップか何かだろう。
そこに飾られた雪だるまをジィーっと見つめる。
街を行き交う人々は皆、の姿に怪訝な表情を浮かべながらも見て見ぬフリをして通り過ぎていく
。
どこからどう見ても不審人物だと思われてしまいそうだったが、は何かを思いついてその場をサッっと離れていった。
「雪といえばやっぱり雪だるまだよ。うんうん!我ながら良い提案だっ♪」
自分を自画自賛し、満足そうに微笑みながらは寮へと帰宅した。
そしていそいそと自分の部屋へと戻ると、クローゼットを開けて何かを探し始め
る。
「どこにあったかなぁ〜。確か去年のクリスマスに使ったんだけど・・・。あ、
あった!!」
ガサゴソと奥のほうから探していた物を引っ張り出すと、は自分の服を脱ぎ捨ててそれに着替え始める。
が不思議な行動をし始めてから1時間後。
携帯でに呼び出されたシンが彼女の部屋を訪れ、コンコンと二・三度扉をノッ
クする。
しかし一向に部屋主からの返事は無く、シンは不思議そうな顔をしている。
・・・だが突然、その扉が開いたと思ったら目の前に赤い物体が飛び出てきた。
「ハッピーバースデー!シンっ」
「げっ・・・!」
シンの目の前に飛び出てきた赤い物体。
それは、大きな袋を抱えてサンタクロースの格好をしただった。
こんな暑い夏の日にそんな格好で誕生日を祝われたシンは、思わず『げっ・・・
』と叫んでしまった。
その声が耳に届いたは、ブゥーっと頬を膨らませて不機嫌な表情に変わっていた。
「『げっ』とは何よ!人がせっかく面白い誕生日の祝い方をしてあげようって思
ったのに・・・」
「だって夏なのにそんな格好で出てくるから・・・つい・・・」
「まぁ今日はシンの誕生日だから、大目に見ることにするね」
「なにそれ・・・」
明らかにシンは呆れ果てている。
そんな冷たい視線にも負けずに、は大きな袋の中から丁寧にラッピングしたプレゼントを差し出した。
「はいっ!シンへの誕生日プレゼントv」
「俺に・・・?」
「シンじゃなかったら誰にあげればいいの?」
「あ・・・ありがと」
ぎこちなさを残したその口調に、彼らしいなとクスッと笑う。
シンは嬉しかったのか、丁寧にそのプレゼントを開けていく。
すると中から、ケーキの形をした雪が姿を現した。
「これって・・・雪のケーキ?」
「そうそう。本当は雪だるまにしようかと思ったんだけど、それじゃあ誕生日の
意味が無いな〜って思って」
「凄い・・・。俺だけの為にここまでしてくれたんだ?」
「だって今日はシンの誕生日でしょ?当たり前じゃない?」
「・・・すっごい嬉しいんだけど」
彼なりの最上級の表現で嬉しさを表すシン。
喜んでくれたようで、としてもここまでした甲斐があったというものだ。
良かった・・・と思っていると、シンがおもむろに雪のケーキを一つ摘んで口へ
と運んだ。
「え?!ちょっ・・・シンっ・・・お腹壊すよ?」
「じゃあ一緒に壊そうよ」
「へ?」
シンはもう一度、雪を摘むと今度はの口へと無理やり押し込む。
そしてが抗議する暇もなく、その唇を塞がれた。
「んっ・・・?!」
ほんの一瞬だったが、唇を奪われた。
はピシっと固まるが、過ぎてしまってはどうすることもできない。
シンは満足そうな顔をして去り際ににこう言い残していった。
「ありがとう。サンタさん」
その時の笑顔はにとって、どう見ても意地悪そうな笑顔にしか見えなかったという。